2012年3月31日土曜日

荒尾競馬:組合解散式 市長が最後の訓示

荒尾競馬組合の解散式が30日、荒尾市の荒尾競馬場であった。職員20人に組合管理者の前畑淳治市長が最後の訓示をした。31日に正式に解散する。

 前畑市長は「馬がいない競馬場は寂しい。皆さんは私以上に寂しく感じていると思う。市制70周年の年に荒尾競馬が80年以上の歴史を閉じるのは、残念で申し訳ない思いもする」と述べた。

 競馬場の跡地問題では声に力を込め「有明海沿岸道路を福岡県から競馬場近くまで延伸できるよう国に働きかけている。これまで市に貢献してきた競馬場をさらに貢献できる生きた土地にしたい」と述べた。

 職員は一部の臨時職員を除き、市への復職など4月からの進路が決まっているという。一方、騎手や調教師など直接競馬に関係していた102人のうち84人が、現在までに再就職や引退を決めた。厩務(きゅうむ)員11人や装蹄(そうてい)師4人ら計18人の進路が未定という。

 市競馬対策課は4月から対策室に縮小し、7人から3人体制で関係者の再就職支援や跡地の管理を続ける。(毎日新聞)

南関競馬4場で騎手フリー化へ

関東地方公営競馬協議会は30日、南関東4競馬場(大井、川崎、船橋、浦和)所属騎手の「騎手会所属騎手制度」(いわゆるフリー騎手制度)を4月1日から導入すると発表した。これまでは南関各場のいずれかの厩舎に所属することが義務化されていたが、フリーとなった場合は所属する都県の騎手会所属騎手として活動することになる。

 フリーとなるための要件としては(1)南関東4競馬場のいずれかの騎手会の会員であること(2)満25歳以上(3)南関東所属騎手として継続して3年以上の騎乗経験を有すること(4)通算50勝以上挙げていることで、これら4項目を満たすのが条件。

 現在でもリーディング上位騎手は厩舎に所属しながら、所属している以外の厩舎からも多くの騎乗依頼を受けていたように、実質上フリーに近い立場にあった。だが、フリー制度を明文化することで所属厩舎優先によるしがらみなどから完全に開放され自由が利くことになる。

 関係者によると、既に数人の騎手がフリー化を申し出ているという。ある騎手は「騎手にとってのデメリットは少ないでしょう。特に上位の騎手にとってはフリー化したほうが動きやすくなるでしょうね」と話している。一方、調教師サイドからは「フリーの騎手のほうがレースだけではなく、朝の調教の騎乗依頼などもやりやすくなるね」との声も聞かれた。

 また、他地区地方所属騎手が交流競走で騎乗する場合のその日の騎乗回数制限を、現行の4回から、8回まで(連続6回以下)に改めることも併せて発表された。(デイリースポーツ)

2012年3月26日月曜日

佐賀競馬:来年度予算案114億円を承認 ネットの馬券発売が好調、前年度比3億4200万円増--県競馬組合

佐賀競馬(鳥栖市)を運営する県競馬組合は23日、定例議会を開き、総額114億7400万円の12年度当初予算案を承認した。インターネットを利用した馬券発売の伸びが好調で、前年度比3億4200万円(3.1%)増となる。

 新年度は、11月からJRAの電話投票システム(アイパット)で佐賀競馬の馬券も発売するほか、佐賀市から鳥栖市への移転40周年を記念し各種レースを開催する。さらに七つの対象レースの1着馬をすべて当てる「7重勝単勝式」を独自に発売する。

 同競馬は景気低迷などで、他の地方競馬同様に入場者や馬券発売額が減少している。しかしインターネット発売など在宅投票が前年より約15%増加、全体を下支えしている。このため同組合は「今年度売り上げは10年度を上回り、わずかながらだが単年度は黒字見通し」とみている。(毎日新聞)

2012年3月24日土曜日

佐賀競馬3年ぶり黒字見通し

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 佐賀競馬(鳥栖市江島町)を運営する県競馬組合(管理者・坂井浩毅副知事)は23日、定例議会を開き、インターネットによる馬券販売の好調を受け、本年度決算は3年ぶりの黒字となる見通しを明らかにした。
 ネット販売による本年度のこれまでの売上金は19億8800万円で、全体の約2割にのぼっており、組合は「わずかだが、決算が黒字になるのは間違いない」としている。また、約114億7400万円(前年度当初比3・1%増)の2012年度当初予算案を承認。ネット販売による歳入は、同年11月から日本中央競馬20+ 件会(JRA)のネット販売システムの利用が可能になることなどから、24億2100万円(前年度当初比25・7%増)を見込んでいる。(西日本新聞)

2012年3月21日水曜日

中央競馬会54年ぶり赤字、震災で106億円損失

日本中央競馬会は21日に経営委員会を開き、2011年度決算を議決した。当期純損失は約63億円で、1957年度以来、54年ぶりの赤字決算となった。
 赤字に転落した主な要因は、東日本大震災関連の損失が約106億円に達したため。このうち、被災自治体や日本赤十字社等への義援金拠出に約50億円、被災した福島競馬場の復旧工事費などに約40億円を費やした。
 馬券の売上金など事業収入も、震災の影響で春季の約1か月間、関東地区などで競馬開催が出来なかったため、前年度比で約1375億円減の、約2兆3062億円にとどまった。(読売新聞)

2012年3月20日火曜日

門別競馬場で道営競馬初の「屋内調教坂路」完成




 道営競馬初の「屋内調教坂路」が19日までにほぼ完成した。ホッカイドウ競馬を運営する北海道軽種馬振興公社(理事長・三輪茂日高町長)が昨年10月から日高町の門別競馬場に建設を進めてきた。4月中旬に竣工式を行い運用開始する。

 競馬場北側に外観が出来上がった新屋内坂路は全長900メートル、幅10メートル。コースには脚の負担を少なくするためウッドチップを敷き詰めた。傾斜角度は0.5%~5.5%で、2頭の併走が可能。ハロンタイム測定表示や視認モニターテレビも設置される。

 心肺機能を高める坂路調教の有効性はすでに、中央競馬の栗東、美浦でも実証済み。一昨年秋に道営競馬存続が決まったのを受け、活性化への起爆剤として、強い馬づくり、冬の間の馬場閉鎖解消による在きゅう馬の増加、質の向上を図るために同施設を建設することになった。総工費6億9000万円は、3分の2を馬産地再活性化緊急対策事業の助成金でまかない、残りを道が負担した。

 北海道調騎会・若松平会長(62)も「寒冷地で通年調教を可能にする大きな拠点。坂路調教のノウハウも研究しながら強い馬を育てたい」と期待する。オープン後は、新たな“観光名所”としてファンや子どもたちへの開放イベントも計画中だ。(報知新聞)
【写真】屋内坂路坂上から見たスタート方向(上写真)。ゴール付近の外観。外壁が坂下まで長く延びている(下写真)

岩手競馬で活躍「怪物」しのぶ会

90年代に岩手競馬で活躍した伝説の競走馬で、6日にこの世を去ったトウケイニセイをしのぶ会が18日、滝沢村の馬っこパーク・いわてで開かれた。
 トウケイニセイの生涯戦績は43戦39勝。日本記録(当時)の18連勝をマークした往年の走りは、「岩手の怪物」として地方競馬界で今も語り継がれている。95年に引退後、北海道や馬っこパークで余生を過ごしていた。
 しのぶ会では、先日現役引退を表明した4000勝ジョッキーの菅原勲騎手らが参加し、思い出話に花を咲かせた。菅原騎手は「二日酔いでもレースに勝つことができた」とエピソードを紹介。調教師や参列したファンと昔のレースの映像を見て功績を振り返った。
 紫波町から参加した佐藤公亮さん(36)は「一つの時代が終わった感覚。トウケイニセイはみんなを笑顔にしてくれる存在だった」と別れを惜しんだ。(毎日新聞)

外れ馬券で特産品当たるかも…黒船賞・桜花賞

高知競馬場で20日に行われる「第14回黒船賞」に合わせ、高知県競馬組合は埼玉県浦和競馬組合と協力し、同賞と「第58回桜花賞」(21日、浦和競馬場)の両重賞レースの外れ馬券で高知、埼玉の特産品が当たるキャンペーンを実施する。
 黒船賞(ダート1400メートル)は「Jpn3」に格付けされている。今回は重賞4連勝中のスーニ(牡おす・6歳)が出走し、武豊、岩田康誠両騎手ら日本中央競馬会(JRA)のトップジョッキーも参戦する。桜花賞(ダート1600メートル)には地方競馬所属の3歳牝馬が出走し、高知競馬場でも当日、馬券が場外発売される。
 応募は、両レースの外れ馬券計2000円以上(ただし1レース1000円以上、複数枚も可)に、氏名、住所、電話番号を書いた紙を同封し、23日の消印有効で〒107・8880日本郵便赤坂支店支店留「桜花賞×黒船賞コラボプレゼントキャンペーン係」に郵送する。抽選で100人に高知県の「土佐あかうしハッシュドビーフ・カレーうどんの素」、埼玉県の「COEDO生ビール」が贈られる。問い合わせは県競馬組合(088・841・5123)。(読売新聞)

2012年3月19日月曜日

佐賀競馬、巻き返しへ

昨年12月23日に、荒尾競馬(熊本県荒尾市)が83年の歴史に幕を下ろしてからまもなく3カ月。九州唯一の地方競馬となった佐賀競馬(鳥栖市江島町)でも、経営難に陥った荒尾同様、レジャーの多様化や景気の低迷を背景に、2年連続の赤字となるなど苦しんでいる。佐賀競馬を運営する県競馬組合(管理者・坂井浩毅副知事)では、荒尾の“財産”も取り込みながら、巻き返しに取り組んでいる。
 荒尾競馬廃止の影響は佐賀競馬にどのように表れているのか。1月の佐賀競馬全体の売り上げは前年同月比で9.6%増となったが、馬券のインターネット販売の増加などが要因。佐賀競馬の本場のみの売り上げは前年同月比4.0%減、来場者も同2.6%減の2万6601人で、荒尾競馬の廃止で「荒尾のファンが佐賀に足を運ぶのでは」との予測もあったが、まだそうとは言い難い状況だ。同組合の渕上忠博管理課長は「長期的に見てみないと荒尾競馬廃止の影響は分からない」と話す。
 一方で、佐賀競馬の懸案だった荒尾競馬での場外馬券発売の継続については一定のめどが付いた。佐賀競馬の2010年度の馬券売り上げ約104億円のうち、約12億7千万円を占めた荒尾での場外発売。同組合は荒尾市に発売継続を求めてきたが、12年度は同市が委託する民間企業が運営する見通しだ。同組合は「13年度以降の継続も同市に強く要請していく」としている。
   ◇   ◇
 「受け入れてくれた佐賀競馬の関係者、ファンに感謝でいっぱい」。1月に荒尾競馬から移籍後初勝利を挙げた岩永千明騎手(29)にファンが熱い声援を送った。白石町出身、佐賀競馬では14年ぶりの女性騎手としてレースを盛り上げている。
 魅力あるレースづくりを模索する同組合に、荒尾から移籍した約100頭の馬も好影響を及ぼしている。佐賀が抱える競走馬が計約570頭と増えた分、1レース当たりの出走頭数も増えた。頭数増は、レース展開の多様化や高額配当にも結び付く。
 また、荒尾で開催されていた人気レースの佐賀での実施も目指している。九州産馬交流競走の「霧島賞」と「たんぽぽ賞」が開けるよう現在、日本中央競馬会(JRA)と協議を重ねている。
   ◇   ◇
 活性化策はレース内容だけでなく、馬券の充実にも取り組む。注目は全国初の取り組みとなる指定した7つのレースの1着馬すべてを当てる馬券「7重勝」。7重勝は現行の競馬法で認められていないが、同組合が昨年、特定地域のみ国の規制を緩和する「構造改革特区」の申請を行って認められた。「かなりの高額配当が期待でき、人気を呼ぶのでは」と渕上管理課長は期待を寄せる。早ければ4月から、ネットを通して販売するという。
 ネットでの馬券販売が伸びていることを受け、販売経路の拡大にも取り組む。地方競馬の主要レースがJRAのネット投票システムで全国発売されることになり、佐賀でも佐賀記念やサマーチャンピオンなどの重賞レースを対象に今年11月以降にも始める予定だ。
 本年度の売り上げは、3年ぶりの黒字も見えてきている。今後、各種の打開策が奏功するか、ファンや関係者は注目している。(西日本新聞)

2012年3月17日土曜日

岐阜県地方競馬組合:一般会計117億円

県地方競馬組合の定例議会が16日開かれ、職員給与の抑制を延長する条例改正と、総額117億6000万円の新年度一般会計予算が決まった。笠松競馬の年間開催日数は95日間980レースを予定している。

 歳入では勝馬投票券(馬券)発売収入が対前年度比約3億円増の109億9000万円を見込み、通常発売を106億円、JRA発売は試算の4億8000万円から手数料などを差し引いた3億8000万円を見込んだ。

 組合管理者の広江正明・笠松町長は「有料入場者数、発売総額など対前年度比で増加した。名古屋競馬との年末年始のすみ分けや、川崎競馬との場外発売の連携などが効果をもたらした」と成果を強調し、基金の繰り入れなしに決算できたことを率直に喜んだ。(毎日新聞)

2012年3月16日金曜日

4127勝・岩手競馬の雄 菅原勲騎手が引退


 岩手県競馬組合は15日、岩手競馬史上最多の通算4127勝を挙げた菅原勲騎手(48)が引退すると発表した。日本中央競馬会(JRA)のG1レースを地方競馬所属の馬で初制覇するなど、岩手競馬の誇るスタージョッキーだった。31日付で同競馬の調教師となる。
 菅原騎手は奥州市江刺区生まれで、1981年10月に初騎乗した。92年7月には5544戦目で1000勝を挙げるなど高率で勝利を重ねた。2010年11月29日には地方競馬史上6人目となる4000勝を達成した。
 1999年2月には、JRAのG1レース「フェブラリーステークス」で岩手競馬所属の「メイセイオペラ」に騎乗し勝利した。
 通算39勝し、今月6日に死んだ岩手競馬の名馬「トウケイニセイ」にも騎乗。菅原騎手は「自分が騎手生活を終える時に亡くなったのも、何かの巡り合わせかもしれない。これからは岩手生え抜きのスターホースを育てたい」と話した。(河北新報)
【写真】通算4000勝を達成し笑顔の菅原騎手=2010年、奥州市の水沢競馬場

2012年3月9日金曜日

大井競馬場にて「相馬野馬追」復興応援イベントが行われる


9日、大井競馬場にて「相馬野馬追(そうまのまおい)」の復興応援イベントが行われた。

イベントには相馬野馬追騎馬会のメンバーが来場し、南相馬の現状について紹介したほか、場内でTCKジョッキーらと募金活動を実施。また、この日の第10競走は、売上の1%相当額を相馬野馬追執行委員会に寄付する「復興応援!相馬野馬追賞」として施行され、レース発走前には発馬の螺(かい)が吹奏された。

※「相馬野馬追(そうまのまおい)」
西暦937年、相馬御厨(みくりや)の官職にあった相馬氏の始祖「平小次郎将門(たいらのこじろうまさかど)」が、野馬を敵兵に見立てて追う「軍事訓練」とし、捕らえた馬を神前に奉納したことに由来する。現在は神事として、例年7月下旬の3日間にわたり、「相馬野馬追」を実施。数百騎の騎馬武者が登場し、その勇壮な行事は「世界一の馬の祭典」と称される。
【写真】あいにくの空模様となったが、大井競馬場に螺の音が鳴り響いた

2012年3月8日木曜日

名古屋競馬検討の有職者会議設置へ

県、経営改善に向け
 県は7日、県競馬組合が運営する名古屋競馬(名古屋市港区)の経営改善策を検討するため、新年度、有識者による経営改革委員会を設置する方針を明らかにした。同日の県議会2月定例会の本会議で、県側が答弁した。2012年度いっぱいかけて検討し、翌13年度半ばに提言を行う。

 名古屋競馬は近年、レジャーの多様化などで売り上げが減少し、04年度には、有識者らの懇談会で存続か廃止かが議論された。同組合は、保有資産の売却や集客増が見込めるレースの開催などに取り組んで翌年度は黒字に転換させたが、10年度以降、再び赤字に転落。累積赤字は約40億円に上っている。

 県農林水産部によると、経営改革委員会は、過去の懇談会のメンバーが中心となる予定。第三者の視点から、収支改善に向けた取り組みを議論するという。(読売新聞)

2012年3月7日水曜日

最多勝記録保持のオリジナルステップが引退

日本におけるサラブレッド系競走馬の最多勝利45勝という記録を保持するオリジナルステップ(牡12、高知・細川忠)が引退することが高知県競馬組合(高知競馬)より発表された。
 オリジナルステップは父ブラックタイアフェアー、母ダイナソシエ(母父ノーザンテースト)という血統。02年に船橋競馬からデビュー、03年からは高知競馬に移籍し着実に勝ち星を積み重ねてきた(05年7月~06年5月の期間は園田、姫路競馬に在籍)。11年4月には、これまで最多勝記録だったブライアンズロマン(元宇都宮競馬)の43勝を更新する44勝目を達成。同年9月に記録を45勝まで伸ばしていた。
 また引退セレモニーを4日、高知競馬場にて実施する予定であることも併せて発表されている。(ウマジン)

地方競馬52歳ベテラン騎手 川原正一さん


 尼崎市田能2丁目の園田競馬場。一周約千メートルのダート(砂)コースを駆ける競走馬の一群に、デビューから地方通算で4千勝に到達したベテランジョッキーがいた。2005年に笠松競馬場(岐阜県)から移籍した川原正一騎手。通算出走回数は2万戦以上。レースごとに結果が求められる重責のなかで手綱を握り続ける52歳に聞いた。
 ――2月7日、園田競馬場の第3レースで地方通算4千勝を達成しました。
 数字にはこだわっていません。常に一つ一つのレースをこなしていくだけ。地方でもこれだけやれる騎手がいるとアピールはできたと思う。
 ――騎手になるきっかけは?
 父親の友人が牧場関係者でした。中学3年のとき、岐阜の笠松競馬場にある厩舎(きゅう・しゃ)を紹介され、競走馬に騎乗するジョッキーを見て「かっこいいな」と思った。中学卒業後、半年間は厩舎(きゅう・しゃ)で馬の世話をしながら騎手の見習い生活。その後、地方競馬教養センター(栃木県)に入所しました。
 ――そして17歳でデビュー。騎手生活でつらいのは?
 勝てない時がきついですね。20戦、30戦して1勝もできない時もある。皆が勝ちたいから当然かもしれないけど。
 ――心がけていることは?
 馬の能力を引き出してやること。競走馬にも色々あります。スピードのあるスポーツカータイプや馬力のあるダンプカーみたいなものまで。後方からの競馬が好きな馬もいれば先行逃げ切りが得意な馬もいます。
 ――川原さんの場合、騎手の1日はどんな生活ですか?
 開催日は、午前3時に起床。午前6~7時くらいまで調教をした後に入浴と食事。そのあと第1レースに合わせて仮眠をとります。だいたい全てのレースに出走するから午後5時くらいまで馬に乗る。食事を済ませたあと、午後7時過ぎには消灯します。
 ――休みの日は?
 全休日は体を休めることに専念しています。若いころは夜遅くまで遊ぶこともありましたけど、今は日帰り温泉やマッサージで体をほぐすことが多い。この年になると、いかに体力を回復させることが重要なので。
 ――日々のレースでプレッシャーは感じますか?
 僕たちもそうだが、馬にも次の戦いがある。1レース1レースに命をかけている。本命の馬に乗せてもらった時、そのチャンスをものにできるか。勝ったら次も人気馬に乗れるかもしれないが、結果を出さなければ次の声はかからない。どの馬に乗るかは馬主や調教師が決めるから、僕らはあくまで声がかかるのを待つだけです。
 ――5千勝を狙いますか?
 勝ち数は意識していません。ただ、「年をとっているな」と思わせるレースはしたくない。「まだまだあいつは乗れるな」と思ってもらえるから、いい馬に巡り合える。そうやって走り続けていきたいです。
◆かわはら・しょういち 1959年3月生まれ。鹿児島県出身。中学を卒業後、栃木県の地方競馬教養センターに入所。1年半の騎手課程を経て、76年に笠松競馬場で初騎乗。今年2月7日に地方通算4千勝を達成した。地方競馬では史上8人目。年間の出走回数は1千回を超える。
◆◆取材を終えて
 取材当日、川原騎手は出走したレースでスタートと同時に落馬した。左肩を痛めたが、大事には至らなかった。全レース終了後、写真撮影で笑顔をお願いすると、「勝たなきゃ笑えないかな。一回のレースごとに命をかけているからね」。それでも川原さんはカメラの前でかすかな笑みを浮かべてくれた。騎手は常に危険と隣り合わせだ。「今日も無事にレースを終えた」という安堵(あん・ど)の表情が印象に残った。(朝日新聞)
【写真】遠征先の福山競馬場で重賞レースを制した川原正一騎手=広島県福山市、兵庫県競馬組合提供

トウケイニセイ死亡 岩手競馬が生んだ名馬

岩手競馬が生んだ名馬トウケイニセイが6日、余生を送っていた岩手県滝沢村の馬っこパーク・いわてで、腎不全のため亡くなった。25歳。

 現役時代は43戦39勝、2着3回。デビューから41戦連続連対の日本記録をつくった。95年、交流レースとなった南部杯ではライブリマウントの3着。総獲得賞金は3億1577万円。種牡馬となったが、目立った産駒には恵まれず、04年に引退。馬主の小野寺喜久男氏が、昨年3月の東日本大震災で被災。

 終生飼育が困難となったため、有志により終生飼育を目的とした「トウケイニセイ基金」が立ち上げられ、賛同した全国のファンから多くの寄付が届けられていた。後日、お別れの会が開かれる予定だ。(デイリースポーツ)

2012年3月6日火曜日

名馬誕生へ「新兵器」 科学で磨く競走能力


 競走馬たちが日々鍛錬を重ねる日本中央競馬会(JRA)の栗東トレーニングセンター(滋賀県栗東市)でこのほど、自動車のカーナビなどで使われる全地球測位システム(GPS)を競走馬の運動量把握に活用する取り組みが始まった。馬の体調管理は調教師の長年の経験がものをいう匠(たくみ)の世界だが、客観的なデータを援用して走力の底上げを狙う。
■小型端末を利用しデータ集め
 運動量のデータを集めるのはGPSロガーと呼ばれる重さ65グラムの小型端末。競走馬がトレーニングをする際に付けるゼッケンに設けたポケットに入れておく。端末は馬が動き出すと電源が入り、どれだけの時間と速さで馬が移動したか計測する。
 端末に蓄積したデータは競走馬総合研究所(JRA総研、宇都宮市)の運動科学研究室が解析し、診療所経由で厩舎に送る。平均で2万5000キロカロリーといわれる基礎代謝に、その日のトレーニングによる運動量を加えたものが消費カロリーとなってはじき出される。
 端末をパソコンに接続し、インターネット上の地図に、馬がトレセン内をどのように動き回ったかを表示することもできる。
■飼料や調教、効率化
 栗東トレセン競走馬診療所の横田貞夫所長は「運動量を客観的な数字として把握できれば、エサの与え方や調教メニューの作り方などの効率化に応用できるかもしれない」と話す。近年、馬の体格が向上、競走能力が高まるにつれて、与えるエサのカロリーも上昇傾向にある。
 しかし、必要以上にエネルギーを摂取すると「筋肉痛などを引き起こすこともある」と横田所長は指摘する。
今回の取り組みは、まず栗東トレセンの佐々木晶三調教師の厩舎で試行する。昨年、エース格のアーネストリーがGI(重賞)の宝塚記念を制覇するなど35勝をあげ、年間最多勝争いでも全国20位。209ある厩舎のなかで上位の実績がある。
■新しい手法を取り入れていかないと
 「新しい手法を取り入れていかないと、すぐに置いていかれる世界だからね」と笑う佐々木調教師。馬のコンディションは、毛のツヤ、歩き方、筋肉を手で触ったときの感触の違いなど様々な手法で見極めてきた。
 長年培ってきた勘と経験、感性がものをいう点は今後も変わらないとしながら、そうした領域で科学的なデータがどう生かせるのか興味津々だ。
 例えば休養で体重を大きく増やして帰ってきた馬を、レースで走れる水準まで絞り込む場合。必要な運動負荷が正確に分かれば、馬にとって負担になりすぎない最小限度のメニューを課すことができるかもしれない。馬が気分良く走れなければ、本番で好成績は生まれない。
■名馬分析がルーツ
 GPSなどを使った運動量の測定は、過去にも実施されていた。しかし対象は2000年に重賞を8連勝したテイエムオペラオーや、01年のジャパンカップダート優勝馬クロフネ、02年のダービー馬タニノギムレットなどの名馬に限られた。
 心拍数の計測機器を載せ、血液検査で疲労時にたまる乳酸値も調べて秘められた能力を科学的に研究するのが主な目的だった。
 当時はGPS機器の価格が1個10万円を超え、厩舎にいる20頭前後の所属馬全てに載せるのには向かなかった。今回導入する端末は1万円を切り、運動にあわせて電源が入るなど維持管理も楽になっている。
 佐々木厩舎のケースでは、データ収集のため日々、馬の体重を測定するようになったほかは特に厩舎側の手間は増えていないという。横田所長は「手軽さをアピールして徐々に取り入れる厩舎を増やしていきたい。将来的には導入から分析まで厩舎でできるようになれば活用の幅も広がる」と期待してる。
■レジャー向け汎用品を調達
 今回、栗東の競走馬診療所が調達した小型端末は、競走馬向けに特化した製品ではない。汎用品で、近年では山歩きやサイクリングを楽しむ人たちが、走破したコースを記録するのに利用している。財団法人日本サイクリング協会(東京・港)によると「自分が走った峠などを地図上に表示、知人に自慢したり、ブログなどに載せたりして楽しんでいる」という。
 GPSで自動的に撮影地点の位置情報を記録するデジタルカメラや携帯電話なども増えている。測定精度が上昇し、価格もこなれたことでアウトドアや健康志向の高い層に受け入れられている。人の世のブームが、競走馬の世界に技術革新をもたらすとすれば珍しいケースとなる。
【写真】厩舎の周りを歩き軽い運動をする佐々木厩舎の競走馬(滋賀県栗東市の栗東トレーニングセンター)